癒しを求めて

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桜の木に裏切られ、ロッカーという癒し空間を追い出された彼女は、倒れていた。自室のベッドに。 「なんで一人にすらなれないんですかー、私が何をしたってんですかー。確かにロッカーを改造したり、桜の木を叩いたり、門ってなんだかエロイなとか妄想しましたけど!何が悪いって言うんですかー。」 自分だけの空間というだけで、彼女はよく分からないことを口走っている。何を言っているかは彼女も理解していない。 言った後に、あの時の私は何を考えていたのかと、どうしようもないことを考えるくらいには何も考えずに口に出す。 「あのやろー、人のことじろじろ見やがって―。私は一人がいいんですー。話しかけないでくださーい。」 頭に浮かぶのは、後ろの席の男の子。彼女の事に着いて日記を書いている二ツ家拓海君だ。彼は日記の事もあり、よく彼女に話しかけるが、よく無視されるようになった。 一月は彼女も対応していたが、だんだん鬱陶しくなったのだろう。話しかけるたびに嫌そうな顔をする。対する彼は、その反応も楽しんでいるようなので、別に問題はないだろう。 「あー、小説読む気分じゃないし、眠くもないし。どうしよう。」 部屋を見渡して見えるものは、くまのぬいぐるみと勉強机、木のタンスにお菓子セットとパソコンと、その隣に小さな机。フローリングの床の上に敷いている花柄のカーペット。棚には小物と携帯ゲーム機。後、母から渡された小さな花瓶にかすみ草を挿している。 ドライフラワーにしている途中だ。 とりあえずパソコンでも点けますか。思い立ったが吉日。早速起き上がりパソコンを立ち上げる。 「時間かかるし、飲み物でも取ってこようかな。」 自分のアカウントで入ってから、彼女は部屋を出て行った。戻ってくると、コップを机に置いてクマのぬいぐるみを抱きしめた。 どう見てもただの目の赤いクマのぬいぐるみだが、彼女にとっては違う。これはいつでも一緒に居なければならない存在。簡単に言うと、恋人の様なものだ。三才の時から同じなのだから家族とでも呼んであげればいいものを。
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