学校での楽しいところ

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推理小説を読む彼女の顔はとても真剣だ。探偵さんが答えを言ってしまう前に、どうにかして自分の考えをまとめなければならない。 読む速度が多少早い彼女だが、さすがに休み時間の間だけでは読み切ることが出来ない。今日も家に帰るまで頭を悩ませることだろう。 私はそんなに読まないが、推理小説というものは情景描写が少ないらしい。主に書いているのが心理描写に、事件に関わるものに、トリック。トリックを仕掛けたり、解いたりといった事は想像しやすい。 が、部屋の中身はただの妄想となる。この人は、こういう事をする人だからこういう部屋だろうか。こんな過去がある人だからこういう物を置いているかもしれない。そういう妄想が繰り広げ、尚且つ謎を解き明かす。彼女はかつてない程頭を悩ませていた。 彼女が読む小説の探偵さんはひねくれ者だ。謎を解く鍵が一体どれなのか。 彼が聞く内容がどうしても一般的な日常会話。しかもこの探偵、安楽椅子探偵という、現場に行くこと無く、情報として与えられた手掛かりのみで事件を解決する探偵だ。探偵の視界的情報もなく、推理初心者の彼女にはさっぱりであった。 ダメだ。分からない。 図書室で一人頭を抱え、結局借りていくことになった。 次の日には、家で読み切ってしまった本を返し、新たな本を手に取る。今日これを手にしたのは、アリスという単語に引かれたからだった。 思った通り不思議の国のアリスとつながりがあるとは思っていなかったし、推理要素があるとも思っていなかったが、世界には入りやすかった。 分厚いわりに場面転換は早くて飽きないし、何よりキャラどうしの掛け合いが面白かった。 今度から毎日、ここに来ようかな。
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