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彼女、柊奏は生き物が苦手であった。彼女曰く、思考回路のある、いつ裏切るか分からないような者と付き合いたくないとの事。
裏切り行為に関して言うなら人間以外は良さそうに思うが、いけないそうだ。自分以外の何かが蠢いているのを見ると、気持ち悪くなる。そう、彼女は言っていた。
「今年もきれいだね。」
桜の木に抱き着き、頬擦りまでしている女の子は、言うまでもなく彼女であった。
これでは植物も生き物だなどと怒る人もいるかもしれない。彼女だってこの桜の木を生のない無機物だなどとは言わない。動かなければ、それでいいのではないだろうか。
「こんなに大きく育って……。可愛いわ」
何が可愛いのかさっぱり分からないが、愛しいものを見るような目をする彼女はまるで聖母のようであった。太陽で輝いていた。
桜の木に抱き着いて、ひたすらなでなでしていた彼女だが、校舎のどこかを見て驚いた顔をした。
「あぁ、もう休み時間が終わる。ごめんね。もう行かなきゃ。」
名残惜しそうに一撫でして、彼女は口づけをした。手を離そうとした彼女の腕にさわさわとした何かが横切った。
4月、春。この時期に桜の木に住んでいて、動ける生き物と言えば何が想像できるだろうか。桜の木は多くの害虫が住んでいる。
この学校でもよく毛虫が降ってくるが、毛虫と言っても一種類ではない。気になる人は調べてみると言い。そして私の様に吐き気と戦えばいい。
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