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彼女、柊奏は一人の時間を大切にしていた。その時間は恋人との関係よりも、先輩との関係よりも重要で、彼らを放置してでも一人になれる時は一人になる。それが彼女という人間であった。
一人になれる時間というものは学生にはあまり取れるものではない。
平日は学校に行かねばならないし、家に帰ればゲームをやり放題な弟が居る。っと、これは彼女の一日であったか。一般的に言うなら、平日休日共にある部活動という存在だろうか。同じ部活動をする先輩後輩、それに顧問の先生であったり、別でコーチが来る部もあるのだろうか。
そこら辺はよく分からないが、一人になれないと言った話だ。置いておこうか。
この学生時代。一人になれる時間は個室に一人の時間。そう、学校ではそうそうそんな空間は作れないのだ。だが彼女は何としてもこの学校で一人の時間を作りたかった。
この学校の特徴として、移動が多いことがあげられる。昼休みでさえ、それほど遊ぶ時間は無いのだ。お昼を一緒に食べても、次に受ける授業の場所が違う。
彼女の場合はまだ一年生で、それほど移動は無いが。
桜の木に振られるという、彼女にとって事件と呼べる出来事があってから、彼女はふさぎ込んでしまった。学校のロッカーを勝手に改造して、昼休みの度に引きこもるほどに。
彼女がそんな事になっているとはいざ知らず、毎日引きこもるロッカーに荷物を置いていた少年が居た。
彼の名前は二ツ家拓海。実はどこかで出て着た少年だがどうでもいい。彼は何故か自分のロッカーではなく、彼女が引きこもるロッカーに体操服を入れていた。
友達と一緒に行こうとして居た彼は困った。体操服を入れていたロッカーが、いくら引っ張っても開かないのだ。
「そう言えば、そこのロッカーって間の板が無いよな。」
彼の友達が思い出したように告げだ。
ここのロッカーは縦に三つずつ続いた形だ。普通は人が入れない狭さなのだが、こっそりと彼女が改造した結果、一人くらいなら入れるようになっている。一人分では間に一枚入っているが、それももちろん外してある。あれがあっては彼女が中に入れないからだ。
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