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相澤は、野中から取り締まれる証拠となるだけの映像を得たらしい。相澤が、刑事のような表情になっていた。相澤の赤い頬は変わらないが、目つきだけで、随分と印象が変わる。
「そうか。では、協力をありがとう」
相澤が帰って行った。
「では、これが去年の試合」
俺は、野中に通信回線を借りると、征響から映像を貰った。
「秘蔵。征響と秋里先輩の夜の生活」
久芳家の庭で、サッカーの練習をしている映像であった。
「…………」
「これ、俺がよく見ている光景」
練習の後に、又、集まって練習しているのだ。他の高校のサッカー部も混じっている。
互いに教え合ってもいるが、皆、ライバルで競い合っている。
学校の部活動では主に体力をつけ、この場では技術を磨き、競い合うような感じになっていた。
「今度、ウチに来てみるか?」
「行きます!」
仲間に入れるかどうかは、本人たちの気力と努力が必要であろう。
「で、野中先輩、違法の方の映像をください。相澤にはそっちは渡せなかったでしょう?」
画像には盗撮があった。
「まあね。建物内部ね」
客を取る学生たち。倍薬(ダブル)を飲み、意識を飛ばしていた。相手が誰であったのかも、覚えていないのかもしれない。
室内の映像もあって、これは成人限定版になっていた。
「軽い気持ちなのだろうけどね、一生引きずるよ……」
男子の指定も多いのだそうだ。それも、運動部を希望が多いらしい。甲子園に出た選手希望などもあって、坊主頭も画面を横切った。
「ありがとうございます」
持って歩くのはまずいので、自宅へと送信しておく。他にそっと、藤原にも送っておいた。
「では、帰ります。俺は四区を抜ければ、ランニングの距離で帰れますので」
征響の高校までも、ランニングで行ったのだ。自転車は家に置いてきている。
「四区は危ないよ」
「だから、俺は四区の中学出身ですよ。毎日、あの中にいたのです」
中学までは、四区を通らなくても通学できた。天神の森を突っ切って降りてゆけばいいのだ。でも、学校自体が四区であったので、通学通路など問題ではなかった。
第六章 海の消える先二
野中の家を出て、四区に入る前に、倍薬(ダブル)の製造場所を確認してみた。海に面した倉庫で、かなり大きい。表には看板も何も出ていないが、通用口から幾人かが出入りしていた。
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