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「始めは、ここで給仕のバイトをしろと言われるのさ。で、給仕をしていると、倍薬(ダブル)を飲まされて、客に下の部屋に連れ込まれる。朦朧としている内に犯されて、一回目の仕事は終わり」
赤い絨毯に白い壁、生の花が飾られていた。
店長と呼ばれたのは若い男で、まだ学生のような感じでもあった。
「はい集金は完了」
「又、いい奴を入荷しようか?」
男は俺を指さし、手を振っていた。
「前回の泣き続ける球児にはまいったよ。いいケツだったけど掘る度に、お父さん、お母さん助けて、だからな。で、今はこいつに夢中」
俺のことをジッと見つめた店長が、何度か頷いていた。
「確かに上玉。じっくり落とせよ」
手を振ってエレベータに乗り込む。中は見られたが、あまり収穫は無かった気もする。店長も本物かは分からない。
「さてと、怪しい空気だからな。送ってゆくよ」
エレベータから降りると、数人の屈強な男が待ち構えていた。
「裏切りそうとなると、すぐに制裁かよ」
「裏切るのですか?」
かなりピンチの気もするが、男が呑気なのでつられてしまった。
「高校生が潜入してくる程、有名になってはダメな商売だよ、コレ。引き時」
殴りかかってくるのを避けて、ベンツに行くと、運転手も機会を待って走りだしていた。
「いい度胸、一緒に乗れ」
俺がベンツに乗ると、車が加速する。
「全く……」
追ってくる様子はない。
「どこに送ってゆこうか?」
実家は困るので、駅がいいのだろうか。
「その前に、この土地を仕切っている藤原に寄る」
それはまずい、どこかで車を降りなくてはいけない。
「ここで、降ります!」
「藤原がまずいのか?すぐ済むよ」
降りる間もなく、藤原の本家に到着してしまった。
和風の巨大な邸宅が藤原家であるが、ここに藤原は住んでいない。母親と、本家を飛びだし、同じ四区だが別の場所に住んでいる。何だかんだで、ここも襲撃を受けるうえに、多数の人が出入りしているので落ち着かないのだ。
大きな門の前で、男が捕まってしまった。
「北川、よくこの門を潜れるな。何度も騙しやがって」
男は北川と呼ばれていた。
「商売ですよ。で、今日は情報を売りに来ました」
俺が、その間にそっと車を降りようとしたので、視線が俺に集まった。
「北川!!!!!!!!何て事をしてくれた!!!!!」
北川も周囲の豹変に驚き、俺を見た。
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