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「弘武、自由にさせていたのは、自己責任で行動できると信じていたからだ。これは、その枠を超えている」
その通りだとも思うが、今は相澤にデータを送りたい。
「少しだけ待ってください。逃げません」
部屋から端末を持ってくると、データを相澤に送った。
「今のは何のデータだ?」
「中身は俺も確認していないのです。それで、解析を頼みました。自殺と因果関係があると考えています」
守られていた世界から一歩踏み出す。それは自己責任の世界かもしれない。興味本位で踏み出してしまい、元の世界に戻れなくなったから自殺したのではないのか。
「それでは、そのデータも没収しようかな」
「待ってください……」
北川の映像データが流れていた。ベッドの上で、叫び声と嬌声があがり、浮かび上がる白い裸体が激しく揺れていた。
「…………何だ?これは?」
エロビデオよりも酷い。情緒もへったくれもない、ただ突かれまくり、力のない人形のように揺られていた。声も、肺に取り込んだ空気が、内側から突かれて吐かれているようなものであった。
「……これ、水無瀬先輩だ」
別の意味で、征響が驚いていた。
「まさかサッカー部ですか?」
「いいや、前の生徒会長だよ」
そんな優等生が、こんな場所に来ていたのか。
「これ、倍薬(ダブル)の売人達ですよ」
征響が首を振りならも、肯定していた。
「そうか……だから生徒会が混乱していたのか」
生徒会の会計が、夏休みに校舎から飛び降り自殺していた。受験のトラブルと言われていたが、多分、原因はこれだったのだろう。水無瀬に誘われて、軽い気持ちで倍薬(ダブル)に手を出し、きっとこの映像のどれかで北川に抱かれている。
しかし、北川も子供には手を出さないのではなかったのか。
「弘武、何をしている?」
佳親の目が冷たい。
「あの、いや。学校の中で変な事件がありまして……」
佳親に殴り飛ばされていた。
「馬鹿者!」
ここの兄弟、暴力が多すぎる。
第七章 四区
征響に蹴られ、佳親に殴られて、データも没収された。しかも、一時間も正座で説教された。
惨めな気分で部屋に戻ると、一人夕食の支度をしようとした。
でも、冷蔵庫を見ると材料がない。買いに行くのも面倒で、押し入れから布団を出すと寝転んだ。
こんな学生ばかりの土地で、小遣いレベルの収入では商売にならないのではないのか。では、身体が目的なのであろうか。
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