『天神四区』

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 相澤に連絡を取ってみると、北川の映像の中に、自殺者が幾人か含まれていたと言った。どれも一晩で逃げ出した者で、どうしてなのかは分からなかった。  部屋に戻ると、四区の連中が仲間から俺を外していなかったのか、あれこれ情報が携帯に入っていた。藤原が出た事で、倍薬(ダブル)は一般人が扱うものではなくなった。  我慢してきた四区が、動き出していた。 「売人狩りか……」  一般人の売人を、四区が制裁すると告げている。  しかも、皆が、どうしてなのか俺に、売人を教えろと聞いてくる。教えたら俺も行くと言うと、ピタリと止んだ。   『天神の森の天狗様は俺達の守護神だけど、誰にも見せたくない』  変な返事が帰ってきた。 『俺は仲間外れか』  そう呟くと、大量の返事がきていた。  四区というのは、犯罪の坩堝であるが、ルールがないわけではない。 『何度も言うけど、天狗様は俺達の誇り。汚されたくない』  翌日、バスケの練習をするために学校に行くと、サッカー部に連行されていた。 「久芳先輩の弟でしょう。サッカーしましょう」   でも、サッカーを高校から始めるのは遅いのではないのか。 「バスケ部ですから」  バスケの練習に行くと、同じく先輩達がやってきた。 「印貢、サッカーやってもいいぞ」 「俺、バスケ部ですよ」  やっと着替えると、今度は有明がやってきた。 「おい知っているか?同じクラスの小松原の家、放火にあったってよ」  まさか、売人に対する制裁であるのか。死者は出ていないが、小松原は入院したという。  次に岡森がやってくると、同じように顔をしかめていた。 「どうしたの?岡森」 「学校がどうも変で」  急に二名の先生が、学校を辞めると言っているらしい。岡森は、鍵を取りに行って偶然聞いてしまっていた。  売人に制裁が加わるという噂に、逃げる連中も出てきたようだ。 「岡森、練習しよう」  決して強いチームではないが、それでも、一緒に練習しているのが楽しいチームであった。 「外周、走ってくるか」   一年で走りだすと、他の高校の運動部の一年も走っていた。私立の方であろうか。 「なあ、印貢。四区って、どんな所?」  走りながら有明が聞いてきた。四区と言っても、人の住む場所という点では変わりがない。大きく異なる点というと、警察が敵で、独自のルールを持っている。 「まあ、怖い所だよ。近寄るな」
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