118人が本棚に入れています
本棚に追加
/81ページ
相澤に連絡を取ってみると、北川の映像の中に、自殺者が幾人か含まれていたと言った。どれも一晩で逃げ出した者で、どうしてなのかは分からなかった。
部屋に戻ると、四区の連中が仲間から俺を外していなかったのか、あれこれ情報が携帯に入っていた。藤原が出た事で、倍薬(ダブル)は一般人が扱うものではなくなった。
我慢してきた四区が、動き出していた。
「売人狩りか……」
一般人の売人を、四区が制裁すると告げている。
しかも、皆が、どうしてなのか俺に、売人を教えろと聞いてくる。教えたら俺も行くと言うと、ピタリと止んだ。
『天神の森の天狗様は俺達の守護神だけど、誰にも見せたくない』
変な返事が帰ってきた。
『俺は仲間外れか』
そう呟くと、大量の返事がきていた。
四区というのは、犯罪の坩堝であるが、ルールがないわけではない。
『何度も言うけど、天狗様は俺達の誇り。汚されたくない』
翌日、バスケの練習をするために学校に行くと、サッカー部に連行されていた。
「久芳先輩の弟でしょう。サッカーしましょう」
でも、サッカーを高校から始めるのは遅いのではないのか。
「バスケ部ですから」
バスケの練習に行くと、同じく先輩達がやってきた。
「印貢、サッカーやってもいいぞ」
「俺、バスケ部ですよ」
やっと着替えると、今度は有明がやってきた。
「おい知っているか?同じクラスの小松原の家、放火にあったってよ」
まさか、売人に対する制裁であるのか。死者は出ていないが、小松原は入院したという。
次に岡森がやってくると、同じように顔をしかめていた。
「どうしたの?岡森」
「学校がどうも変で」
急に二名の先生が、学校を辞めると言っているらしい。岡森は、鍵を取りに行って偶然聞いてしまっていた。
売人に制裁が加わるという噂に、逃げる連中も出てきたようだ。
「岡森、練習しよう」
決して強いチームではないが、それでも、一緒に練習しているのが楽しいチームであった。
「外周、走ってくるか」
一年で走りだすと、他の高校の運動部の一年も走っていた。私立の方であろうか。
「なあ、印貢。四区って、どんな所?」
走りながら有明が聞いてきた。四区と言っても、人の住む場所という点では変わりがない。大きく異なる点というと、警察が敵で、独自のルールを持っている。
「まあ、怖い所だよ。近寄るな」
最初のコメントを投稿しよう!