『天神四区』

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「薬物のショック症状です。四区の医師に運びます」  応急処理の最中に、四区のメンバーが仲間を助けに集まってきていた。 「助けた。これ以上の制裁は、天神が許さない。終了せよ」  藤原が、集団の中央から歩み出た。  藤原も天神チームは見慣れているようだが、その中の俺を見つけると僅かに怯んだ。 「兎?」  やはり、この面は兎であろう。白地に赤い線で目が描かれ、金色の縁取りがある。そもそも、天狗の鼻が、狐の鼻程度しかない。 「四区が、それで了承できると思うのか」  すんなり終了とはならないのか。 「では、かかって来い」  藤原が、ニヤリと笑った。ここで大将戦なのであろうか。  でも、藤原が歩み寄ったのは俺であった。 「新人の天狗サン、よろしく頼む」  こいつ、中身が俺だと気付いているのだろう。 「何だと」  殴りかかってきた藤原を避けると、俺はつい本気になってしまった。 第八章 天神の森 「弘武が強いのは知っていたけど、本気できたよな」  藤原家で、藤原に湿布を貼っていた。 「ごめん」  藤原相手に本気になって、おもいっきり蹴り技を入れてしまった。藤原の肩と背に、俺の足跡が残っている。 「由幸(よしゆき)、又、弘武に負けたのか」 「こいつ天神の天狗ですから。無茶苦茶、強い」  将嗣が笑って見ていた。その横で、佳親も笑っている。 「でも、終了となって良かった」  征響は、秋里と寿司を食べていた。他の天神チームも、それぞれが好きな食べ物を注文し食べている。 「なあ、弘武。今日は泊まっていけよ。で、俺の湿布の張替をして」  いいよと言いそうになって、後ろから刺さるような視線を感じた。振り返ると、佳親が睨んでいた。 「どうしてなのかな、天神区は天狗の子孫と言われていて、皆、喧嘩がやたらに強い」  将嗣も、よく天神チームにボコボコにされたそうだ。 「でも、由幸。天狗は、泣かすと可愛いぞ」  そこで、佳親が真っ赤になった。 「分かった。泊まってもいいけど、明日の学校に遅刻するな」  佳親は、将嗣とどこかに移動していった。 「征響、四区は終了でもいいけど、あっちは終了としていないよね」 「まあね。でも、相澤さんがいないだろう。一般人の取り締まりは、警察に任せるよ」  征響は、相澤が警察だと気が付いていたらしい。  征響達は家に帰るというが、俺は藤原に捕まってしまっていた。本当に帰す気はないらしい。
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