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「藤原、どっちの家に泊まるつもり」
この本家にも藤原の部屋はあるが、今住んでいるのは別の場所であった。
「今日は、ここに泊まろう」
藤原の部屋に移動しようとすると、佳親が将嗣と縁側で酒を飲んでいた。
「あ、またイチャイチャか……」
藤原は見ても驚かないが、俺は顔を背けてしまった。将嗣の手は、佳親の胸や腿に直に触れ、時折唇を合わせる。
「弘武、慣れろ。あいつらは、もう長い事、ああやってイチャついとる」
慣れるものなのか。
ぐったりとしつつも、藤原の部屋に行くと、四区の連中が来ていた。
「佳親さんが、身体を許すのは、毎回ではない。今日は特別だと思うよ。ほら、弘武のために動いてもらったという思いが強いのだろう」
藤原の父親だろう。俺は佳親が兄だが、複雑な思いだ。
「弘武。久し振り。データ、ありがとさん」
四区の伊東は、藤原の幼馴染でもあった。
「データ?」
画面に、成人向けの映像が流れていた。
「それ、どうして?」
「弘武の端末から、勝手に貰った」
そういう連中なのだ。
それによると、北川の相手は、ほとんどが大学生であった。その内、一晩で逃げ出した連中に、自殺者が多い。
「秘密を洩らさないように、こういう画像をネタに脅された。それで、知らない奴に抱かれるのも嫌だ、普通の生活にも戻れないで、飛び降り自殺で逃げる。一人がそうすると、他の連中も同じ事をしてしまう」
共有する思いで、小さな訴えだったのだろう。自分達は、死ぬほど苦しんでいると、どうして表に出さなかったのだろう。
「でな、こういうの仕切っていたのは、水無瀬だったよ。驚いた、私立のエリートなのにな」
水無瀬は、映像をカウントすると北川に十数回も抱かれていたという。北川も、水無瀬が気に入ったのだろう。
「映像によると、最近も水無瀬は北川と寝ていた。こっちの映像以外でも、北川と水無瀬が一緒に歩いているものがある。二人は、外でも付き合っていたと思うね」
四区は、北川をマークしていたらしい。
「生徒会長で信頼もあり、容姿端麗な水無瀬は、こんなところで汚れていたのか」
そういう視線で見ると、水無瀬は自分に都合の悪い人間を陥れていた。かなり、したたかな性格であった。
「それで怖いのは、水無瀬は抱かれていたけど、売人ではなかった。今回も被害者であって加害者ではない」
警察に水無瀬は捕まらない。
「怖いな……」
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