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水無瀬は、仕組みを造って、裏で傍観していたのではないのか。
「まあ、倍薬(ダブル)は、これで一般人には、安易に買えない代物になった」
伊東は、藤原の頭脳であった。こういう相棒がいるので、藤原は強いのだ。
「他に、問題も発生していてさ」
倍薬(ダブル)以外にも、藤原を悩ませているものがあるという。
「だから、弘武を呼びだそうとしていたのだけどさ」
今度は、四区の野球部に所属する、狩野が説明してくれた。
「試合で賭けはいいのだけどさ、あまりに金額が大きくてさ」
誰かが、高校生の試合で賭けをしているという。仲間同士で、ラーメンを賭ける程度ならばいいのだが、かなり本格化してきているらしい。
「一回に、数千万が動くというウワサもあってさ」
それは、深刻であった。金のトラブルで、試合の八百長や、ケンカが起きる。
「藤原を通しているのか?それ?」
狩野が首を振っていた。この土地で、藤原を通さない賭けも、ルール違反であった。
「俺の方にも問題が発生。かつあげではないのだけどさ、貢ぐってあるだろ。女の子がホストに貢ぐみたいなものでさ、一人いるらしいのよ。喫茶店のバイトなのにあれこれ貢がせて度を超えてしまったのが」
それは、当事者同士が話し合えば済む問題であろう。しかし、この相手、一家の財産の全てを貰って逃げた。娘は、親の通帳にまで手を出しているのだ。
でも金だけならば、まだマシで、その中に取引の情報もあった。
四区の取引は、裏になる。裏の情報を持ち逃げされたとなると、事は重大であった。
「……それ、詳しい内容を送っておいて……」
他にも、先生が特定の生徒に、テストの内容を教えているとか、盗撮とか、モロモロあった。
「結構、皆、ストレスだよね」
藤原の関係者となると、四区でも特殊になる。自ら、型破りな事ができない。
「デート屋ってのもある。彼氏のいない子の彼氏になるというもの。金さえ払えば、徹底的に彼氏になってくれる。学校も可。かなり人気」
これも、藤原には未認可だそうだ。
「……弘武。やっぱり天神の天狗なんだよな。天神チームは天狗だからな。もう俺達に関われないのか?」
本当の質問は、そこらしい。皆、真剣に俺の顔を見ていた。俺は、天神チームも天狗というのも、よく分かっていない。でも、四区の仲間と関われなくなるならば、そんなものは辞めてやる。
「ずっと関わるよ」
「……良かった」
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