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皆の力が抜けていた。
他に、臓器売買のウワサがあった。何故、自殺が増えたのか。彼らは、同じ病院に運ばれ、葬儀の際には臓器が無かったという。誰が確認したのか分からないだろうと言うと、三人が手を挙げた。
「小菅!どうぞ」
小菅は、昔、同じバスケ部であった。真面目ではないが、嘘がつけるような性格ではなかった。
「はい!……バスケでの知り合いが無くなって、葬儀に行った。そこで躓いて、棺の中に手を突っ込んでしまいました」
肩から下が無かった。手や足は服から見えたが、内臓の部分は箱と枕であったという。
「何か事情があるのだろうな、と、その時はそのままでした」
何かの事情にしては、妙であった。
「鳴沢……」
「寿司の配達に行ったら、葬儀屋で、死体の加工をしていました。死体は学生のようでしたが、同じく体の部分なし」
体の部分が無ければ、骨の数が少なすぎるであろう。肋骨もないということになる。
「小菅、骨、あった?」
「病気で苦労して、骨が脆くて無くなったと説明されています。皆苦労したねと、泣いていました」
火葬で失敗したときの常套句であった。よく燃やし過ぎると、そうやって誤魔化す。今はハイテクになって少なくなったが、前はかなりの頻度で何も残らなくなるまで、燃やしてしまった。
「狩野は?」
「え、俺、手を挙げていないよ」
もう一人は伊東であった。話すのを待ち構えているので、俺は、飲み物を先に取りに行った。伊東は話が長い。それに、聞いているだけで、喉が渇いてしまった。
長い廊下を歩いていると、月が綺麗に出ていた。中庭のある家など、あまり知らない。藤原の本家は、日本庭園の中庭を持っていた。
この家の変なところは、家の中に自販機がある。家人しか使用しないせいか、金を入れなくても出てくる。
コーラを取ると、そのまま封を開く。庭を見ながら飲んでいると、正面の障子が開いた。そこには、布団があり、裸のまま将嗣がビールを飲みだした。
布団には、同じく裸らしい佳親の姿が見えた。
「ブッ……」
コーラを吹き出してしまった。正面が庭で良かった。地面に炭酸が溢れていた。
「だから、驚くなと何度も言っているだろう。昔からできている。聞いたら正直に答えてくれるよ、きっと……。俺には中学一年からだと言った」
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