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外周を走ると、グランドに入る。そこでは、サッカー部が俺を見ていた。その中に、潤哉の姿を見つけた。
「あ、潤哉!今度、遊びに来いよ」
「そうする」
サッカー部が、潤哉と俺を見比べていた。
「どういう知り合い?あれ野中 潤哉だよね。港の中学で、久哉、潤哉の双子のコンビでサッカーが凄く強かった。高校で二人が離れるとは思っていなかったけどね」
有明が説明してくれた。
朝練が終わり、教室に入ると、不機嫌そうな相澤がいた。
「相澤、おはよう」
「印貢、やってくれたよな。四区の暴走を止めてくれたのはありがたいけど、映像が流出している」
相澤は、ボソボソと危ない映像が売買されていると教えてくれた。それは、俺が相澤に送った、北川の秘蔵映像であった。
「何言っている。俺は、あの映像を見る前に相澤に送った。それを兄に見つかって、没収された。エロだったし。問答無用でやられた」
椅子に座ると、相澤が目で本当かと聞いてくる。俺が頷くと相澤が唸っていた。
「では、北川から流出したのか」
そのデータが藤原にもあり、他に、伊東も持っているとは言い難い。
「無料の動画とかでか?」
「だから、有料だって言ったろ。でも、変な有料だ、止めたかったら金を払えだ」
その有料は、脅しというのではないのか。
「……相澤さん、それは脅迫というやつですよね、警察の領分でしょう」
「そうだな」
相澤は、学生になりきってもいないのに、刑事だということを忘れている。
「相澤さん。北川の連絡先が分かるかなあ?」
「……会わせないよ」
相澤は机に眠りながらも、口調は真剣であった。
「北川の恋人の、水無瀬を探している」
相澤が寝返りを打つように、こっちを向いた。
「水無瀬は、北川以上に危険。いつも死の匂いがする」
もうすぐ授業が始まるので、詳しい話はできない。諦めて教科書を出すと、相澤が俺を睨んでいた。
「水無瀬には関わるな。あれは、警察に取り締まれない凶悪犯罪者だ」
相澤もあれこれ知っているらしい。
第九章 昔、天狗がいた
部活が終わったので相澤の家に行こうとすると、相澤から仕事で家にはいないとの連絡が入った。
とぼとぼと四区を抜けて家に帰っていると、前に見慣れた人影を見た。
「倉吉先輩」
征響と同じサッカー部で、天神区に住んでいる。
「あれ、印貢、今帰りか?」
「はい!」
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