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「同じバスケ部の岡森の兄が、家に戻っていません。三日になります。それだけならば心配しないのですが、失踪前にいたバイト先の居酒屋には水無瀬がいました」
全員が一瞬固まった。水無瀬というのは、禁句であったのだろうか。
「そうか、水無瀬か。俺達は、それぞれ四区を持っているよな。皆、水無瀬の件で頭を悩ませている」
秋里が、征響の表情を見ていた。
秋里の説明によると、水無瀬は臓器売買に関与している、かけ事の元締めをしているなど、あちこちに関わっていた。水無瀬の背後に、国際的な犯罪組織があるようなので、迂闊に手を出せないらしい。
「国際組織ですか」
俺は携帯電話を取り出すと、ホーに電話をかけてみた。
「弘武!どうしたの、何かあったのか?」
ホーは今仕事中であった。
「仕事中ならば、いいや」
電話を切ろうとすると、ホーが慌てていた。
「ダメ、電話、切ったらそっちに行くからね。何があった?」
俺は臓器売買の話を説明してみた。
「そういう手口ね。いるね、日本は臓器の入手が難しいからね。で、闇医者もいるし、臓器売買もあるよ」
ホーは、裏のルートにも詳しい。商売をするには、裏を熟知していないと怖いのだそうだ。
「ここに出入りしている、組織で四区の知らない奴を教えて」
「そうね、いるね。背中にでっかい龍を彫っているから、龍仁(りゅうじん)と呼んでいる奴で、組織は……」
ホーはあれこれ教えてくれた。ついでだと言って、潰し方も教えてくれた。ホーは、商売の上で、この龍仁の組織に煮え湯を飲まされたという。
「弘武がやらなくても、俺は許せないからね潰すよ」
ホーの仲間の幾人かが、大怪我をしているらしい。取引を中断したら、乗った船に無人船が突っ込んできて沈没したという。
「無関係の人、わんさか沈んだよ。友達は金持ちだったから、部屋に救命ボートがあったけど、逃げる時に銃撃があって大怪我だった」
ルール無視の組織で、ホーたち商人も潰しておこうと画策している。
「ホー、情報料金はないけどさ、代わりに、今度来た時は一緒に遊びに行こうよ」
「了解」
電話を切ると、征響と秋里が、俺を見ていた。
「……どういう友達だよ」
「一時期、一緒に住んでいた留学生だよ。俺のカンフーの師匠で、母の恋人」
得た情報を、征響に説明しておく。ホーという存在は、とても胡散臭いが、裏には詳しい。
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