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「水無瀬の後ろ盾は、竜仁と呼ばれる男かと思う。確認してみるけど、水無瀬の取った客の中に、背に龍のある男がいた」
マジックミラー超しに撮られた映像で、水無瀬の身体の上で生きているように動く龍の映像があった。あれは、北川ではなく龍仁であろう。
「龍仁の組織ならば、敵が多い。敵と手を結べば、潰す事ができる」
学生を自殺に追い込み、その臓器を盗むなど、やっていいわけがない。
「弘武、はやく食べろ」
夕食を忘れていた。港ならば、野中が詳しい。連絡を取ろうとすると、征響に携帯電話を取り上げられた。
「食べることに熱中しろ」
「はい」
これだけの人数の食事は、季子も辛いだろうと奥を見ると、誰かの母親が手伝いにきていた。季子は、楽しそうに、母親達と食事をしている。
征響の存在が大きいので、逆の隣を見ていなかった。誰が座っているのだろうかと見てみると、知らない少年であった。こんなに狭い区域で、知らない顔というのもあったのか。黒髪で、強いくせ毛であった。
「俺、印貢だけど、君は誰?」
目をややこちらに向けただけで、隣は無言であった。
「弘武、そいつは湯沢だよ。隣の家だろう……」
湯沢は知っているが、俺よりも身長が低くて、いつも真っ黒な子供であった。
「湯沢?中坊はあっちに固まっているけど」
「弘武と同じ学年だよ」
そうだったのか、前は小さかったので、年下なのかと思っていた。
「いつの間に、そんな身長が伸びた」
手も、俺よりも一回り大きい。
腕の長さも比べてみると、同じ比率で越されていた。
「佳親さんに、漢方を処方してもらった。凄くチビが気になったから、克服しようと思った」
漢方で背が伸びるとは知らなかった。
「すごいね。俺よりも十センチくらい高いみたいだ」
俺の身長も低くはない、それを余裕で越すなど、かなりの長身になる。
「湯沢、弘武のサポートをして欲しい。弘武は、ここでは新人で何も知らないのに、その突っ走りだから」
秋里に言われて、湯沢が頷いていた。
倍薬(ダブル)、そして臓器売買などと、確かに俺の手にはおえない。でも、岡森の兄など、目の前にいる人は助けたい。
「なあ、湯沢。どこの高校」
秋里が、エッという顔で俺をみた。よく見ると、全員が驚いていた。隣の家の住人も俺は覚えていない。
「同じ……高校」
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