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「……倍薬(ダブル)は世界に広がるわけか」
「そうです。でも、裏世界ですけどね。それで、龍仁には自ら死んで貰います」
龍仁は、買い手に出資させていると噂で聞いた。金が返せなければ、追われる立場になるだろう。
征響が、ため息を付いて胡坐をかいた。
「どこで覚えるの?そういうコト。顔は可愛いのに、本当に怖い。でも、俺の弟だよな」
征響の方も、似たような事を展開していた。まず、倍薬(ダブル)の組み合わせを全て公開し、その副作用と致死量も公開していた。
それだけではなく、学校として服用した場合は退学するなどの制裁処置も取っていた。法律で取り締まるのは無理でも、ここが閉鎖されたような学園都市であるので、学校の方針の影響は大きい。
「あとは、水無瀬だよな。あんまり、関わりたくない人物だな」
どういう人物なのかが、全く分からない。真面目で優秀、完璧主義、そんな評価は多いが、人間像は分からない。
「とにかくだ、ほら、どら焼き。枕にして眠れ」
秋里の分もあった。二枚になると、フカフカになる。
「これは楽しい!」
どら焼きを枕にして寝転ぶと、ドアをノックして秋里が入ってきた。
「秋里先輩、ありがとうございます!」
秋里が寝転んでいる俺を踏み潰しながら、征響に歩み寄る。
「警察に動きがありました。港の倉庫で監禁されていた学生が保護されました」
征響が頷き、秋里が戻るついでに又俺を踏もうとする。俺が逃げると、追いかけて踏んでくる。
「秋里先輩、どうして踏むのですか!」
「転がっているからだろ」
次に、ホーからメールがあった。
『公開終了。いい情報をありがとね、俺の弘武クン』
では俺は部屋に戻ろう。俺の仕業だと分かれば、きっと、水無瀬か龍仁がやって来る。
「部屋に戻ります」
征響の部屋を出ると、玄関から外に出た。ちゃんと、どら焼き二枚は手に持っている。この座布団のようなどら焼きは、持っているだけでとても嬉しい。
部屋の階段を登ろうとすると、藤原が下に立っていた。
「……藤原、家に帰れよ」
藤原が首を振る。
「弘武、キスしたい」
藤原も階段を登ってきていた。でも、キスの前に、暗闇から人影が沸いてきているので、どうにかしないといけないのかもしれない。
人影はやがて固まり、その先頭に黒い服を着た男が立っていた。
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