118人が本棚に入れています
本棚に追加
「商談はぶち壊しだ。水無瀬によると、久芳の連中だそうだ。末っ子から殺そうな。残る連中の泣き叫ぶ姿が見たい。それでも気が済まないけどな」
久芳家という括りで来たのか。
「藤原、部屋に入っていいよ。久芳に用らしいから」
サングラスの男達も出てきて、手に銃を持っていた。銃に狙われると厄介であるが、そう性能のいい銃ではなかった。
「それで、入れるかよ」
「じゃ、部屋にある俺の銃を投げて」
藤原は、そうだなと部屋に入って行った。俺の銃は、本当にある。でも、藤原は佳親に電話をかけ、外の様子を伝えてくれた。
俺を撃とうと構える人間が、龍仁以外にも五人いた。龍仁と思われる男は銃は構えていない。人通りがないにしても、ここは道路であった。よく、銃を構えていられる。
藤原は、窓を少し開けると、俺に中に入れと合図した。俺はそっと後ろに下がりつつも、素早く部屋の中に入った。
「壁はぶち抜けるよ。子供達」
部屋の中で、花火を手にする。この花火は、防犯用であった。火を付けると、窓から投げ捨てる。
ねずみ花火になっていて、かつ、発煙筒のように煙を出す。紫の煙は、夜空に高く登って行った。そこに、今度は打ち上げ花火をあげる。
「撃ち殺せ!」
銃で撃ってきたが、ここは防弾ガラスなのだ。佳親が、バカ高いガラスを買ったと思ったら、俺の部屋のガラスであった。
壁もコンクリートで補強されている。
「しかし、対応が早いよね。どこかで、情報が洩れているかな」
藤原は、他の花火に火を付けていた。
「そうだな……俺は何となく弘武が危ない気がして来ただけだけどな」
藤原は、次々と道に花火を落としていた。この花火は防犯用で、何かあったという合図でもあった。しかし、逆に銃声が花火に紛れてしまい、銃声ではなく花火だと思われていそうであった。
「地区の放送だ」
佳親に、地区の放送で外に出るなと言って欲しいと頼もうとした。しかし、物音がしたので窓から下を見ると、もう人が外に出ていた。
「銃が怖くて、野球ができるか!」
金属バットで銃を叩き落としていた。どういう理論か分からないが、球が怖くてバットが振れるかとの叫びもあった。
「今の子天狗たちはサッカーだけど、その前の世代は野球だったらしいよ」
天狗のスポーツにも、流行があるらしい。そうすると、今、道路にいるのは天狗たちであるのか。
最初のコメントを投稿しよう!