第六章 海の消える先二

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「印貢は坊の親友だぞ。手を出したのか!!!!!!!」  俺と北川は、揃って手を振って否定した。 でも、不審の眼差しを感じる。 「北川!!!!」  藤原の父親が、足袋のまま門まで走り込んできた。 後ろから下駄を持った青年が追いかけてくる。 「違います。倍薬(ダブル)の接待現場を見に行ったら見張りに見つかり、 この人が助けてくれました」  正直に言うと、藤原の父親、将嗣(まさつぐ)が下駄を履いて俺の前に歩いてきた。  将嗣は、俺の耳を引っ張ると頬を叩く。 「もう一回、言ってみろ」  将嗣はかなりの長身で、耳を引っ張られると俺は背伸びした格好になる。 垂れ目は、藤原と同じであるが、迫力は数段父親の方が上であった。
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