第六章 海の消える先二

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「倍薬(ダブル)の現場を見に行きました」 「弘武。危険には近づくなと、いっつも言っているよね?この耳は飾りなのかな」  耳の次に、頬も引っ張られていた。 「二度と、倍薬(ダブル)に関わるな」 「無理です」  今度は襟首をつかまれていた。 将嗣はかなり短気で、藤原もよく殴り飛ばされている。 俺も、イタズラをして、日本刀で切り殺されそうになったことがある。  藤原の親と言っても、俺の兄である佳親と同じ年であった。 「無理だと……」 「仲間を食い物にされているのに、黙って見ていろと言いますか……?」  俺が将嗣を睨むと、周囲が静まってしまっていた。 「分かった。家に送っていくから、中で待っていろ。俺は、北川と話をする」  俺が逃げようとしていると、ここで働いている金田が俺の腕を掴んでいた。
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