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「逃がしませんよ」
藤原の本家というのは、海の見える丘の上にあった。
通された部屋の障子を開けていると、庭が見え、庭の先には海が見えていた。
俺は縁側から外に出て、秋田犬のクマに近寄る。
先が海だけになる芝の小山にクマを引っ張っていくと、ボールを投げた。
「クマ、来い!」
このクマが子犬だった時、藤原と連れまわしていた。
力比べもしたし、自転車で競争もしていた。
空の終わりに海がある。果てしない先まで、海が繋がっている。
俺と藤原は、この丘でよく話をしていた。
クマは大きいが、穏やかな性格の犬であった。
でも、今日は、そのクマが激しく海に向かって吠えていた。
「クマ、誰かいるのか?」
クマは何に吠えているのか。
俺が、吠えている方を見ると、見知らぬ男がふらりと入ってきた。
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