第六章 海の消える先二

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 それでも、六十人はいるのか。 北川も自分の情事の記録を取っているなど、趣味が悪すぎる。 「勿体ないよな。後、二回くらいさせてくれたら、ヤミつきにしてやったのに……」  北川の自信に、根拠は乏しい。 「では、北川さんありがとうございます」  俺は、頭を下げると、金田の小さな車に向かった。 「金田さん、お願いします」 「はいよ」   走りだす車の窓から、藤原の本家を見る。 藤原の家には、時には鉄砲玉のような男が入ってくる。 藤原と一緒の時にも、何度も遭遇した。  俺がここは普通の家ではないと自覚すると、藤原が悔しそうにもう来るなと言った。 もう一緒に遊べないのかと俺が聞くと、急に藤原は口を一文字に結んだままだった。
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