第11話 妻の眼差し

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俺がここまで、反対するのには理由があった。 聡美ちゃんという娘は17歳になる家出娘だ。 実は両親は彼女が10歳の時に交通事故にあってしまい、不運の最後を遂げた。 それ以来、親戚中をたらい回しにされた挙句、一人孤独に苛まれていた。 そして17歳の時、遂に親戚の家を出た。 無論、高校なんて行っておらず、行くあてのない東京をさ迷ってた時に良い仕事があるとスカウトされ、売春婦となった。 身体を見知らぬ親父に弄ばされる日々に彼女の心は壊れかけていた。 そんな時、俺が売春宿を襲撃し彼女を助けた。 そう……俺が怪我した時、人質に取られていたあの娘が聡美ちゃんなのだ。 少しの間、入院してたが退院後、彼女は家には帰らず、みくちゃんの家に居候しながら、安原の事務所で働いていた。 しかし、俺は聡美ちゃんの事が気がかりでならなかった。 何故なら、俺と彼女は接点が似ているからだ。 しかし、このまま俺達と関わり合うと第二の俺を作ってしまう可能性が高い。 だから、俺はあの娘がまともな大人にさせるように再三、安原に頼んだ。 それがこの始末だ。
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