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「お前に頼んだ俺がバカだったよ。やっぱり、意地でも家に帰せば良かったんだ」
ところが安原は俺の腕を強引に離すと、俺に言い返してきた。
「お前は何にも分かっちゃいないっ!あの娘が家に帰ったとしても、また街を徘徊するに決まってるっ!居場所がないんだっ!」
「確かにお前の言う通りかもしれない。だが、俺達と関わるよりはましだ」
「俺だって、あの娘が大好きだよ。気が利くし、掃除は上手いし、皆の夜食も作ってくれる。今じゃここのアイドル的存在だ。だが偶然、この話を聞いてしまったんだ。勿論、俺も反対した。だが、聡美ちゃんはお前に恩返しがしたいって頑なに譲らないんだ」
――俺に……恩返しだと?
初めて恩返しがしたいと言われて、俺は動揺した。
確かに俺は悪人専門の殺し屋だ。
悪人を裁くがその分、お金を貰う。
だから、善意でやっているのではなかった。
俺は恩を返すために、あの娘を助けた訳じゃない。
「聡美ちゃんに言っといてくれ。君の気持ちは嬉しい。だが、俺に恩返しがしたいのなら、真っ当な道を歩んでくれと」
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