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ところが安原は首を横に振った。
「それくらい、自分で言うんだな」
安原は俺の後ろを指さした。
そこには聡美ちゃんが呆然と立っていた。
しかし、顔は見せずに俯いていた。
「とにかく、この件は下で話そう。向かいの喫茶店で待っててくれ」
聡美ちゃんにそう促すと彼女は小さく頷き、オフィスから出た。
俺は後ろを振り向くと安原は後ろを向き、拗ねていた。
「胸ぐらを掴んで悪かったな」
俺は安原に謝ると、オフィスを後にした。
向かいの喫茶店に入ると、既に聡美ちゃんが座って待っていた。
「最近、どうだ?」
とりあえず、挨拶から始めようとしたが彼女の目をふいに見た。
聡美ちゃんの眼差しは既に覚悟を決めていた。
最初は世間話から、話していこうと思っていたが、それは無用となった。
彼女の目がそうさせた。
「……本気なんだな」
俺は一言だけ、聡美ちゃんに聞くと彼女は答えた。
「はい」
――どうやら、決意は固いようだ。
「分かった。安原には俺が話しておく。しかし、その代わり条件がある」
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