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午前中は取引先の所へ行き、昼食は近くの定食屋でとった。
定食はすこぶる美味いのだがやはり、妻の弁当がないと、妙に違和感を感じた。
香澄がいないと、どうも調子が狂うなぁ。
するとそこに櫻井部長がやって来た。
「おう、灰谷。そこ座っていいか?」
「どうぞ」
そう言って、部長は俺の向かい側に座った。
「お前もよくここに来るのか?」
「実は初めてです」
「奥さんとは上手くいってないのか」
こういう質問は嫌なのだが、とりあえず答えるしかなかった。
「あんまり……」
「まぁ、そういうこともあるさ。仕事で頑張れば奥さんの機嫌も良くなる」
出世で妻の愛が取り戻せたら、尚の事良いのだが、残念ながら、そうはいかない。
しかし、部長は珍しく俺を褒めてくれてた。
「お前には期待しているんだ。特に取引先に定評がある。例の社長だってそうだ」
「社長、なんか言ってきたんですか?」
「昨夜、偶然お会いしてな。今回は見送らせて頂きますが灰谷さんは良い営業マンですねだってよ」
「あの社長が……」
「だから、お前も頑張れ」
「はい」
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