2356人が本棚に入れています
本棚に追加
俺が窓から正面玄関を眺めていると急に森次が声をかけてきた。
「最近、どうだ……って言っても元気ないか」
珍しく俺の機嫌を伺うなんて、不気味にも思えた。
しかし、離婚の話を知っているのだと思った。
「安原に聞いたのか?」
ところが森次は首を横に振った。
「いいや、顔に書いてあるよ。正直、今のお前が使えるのか些か、不安だね」
「実は離婚することになった」
「そうか……」
森次はどこか俺を心配してそうな口調で言った。
俺の事を心配しているなんて、妙な感じに思えるが実はそうじゃない。
俺が失敗することはすなあち、奴の出世コースからの離脱を意味していた。
「安心しろ。私情は持ち込まない。だから双眼鏡を寄越せ。もっと近くで見たい」
俺の覚悟を聞いた森次は双眼鏡を渡した。
俺は双眼鏡から、銀行を覗くと現状を聞いた。
「状況は?」
「犯人は二人。だが、過激派のグループに参加してもいなければ犯罪集団の手下でもない。マスクは被ってはいるが監視カメラの映像に丸出しの所を見ると犯罪に手慣れではない。要するに素人だ」
――ったく、簡単に言ってくれるな。
最初のコメントを投稿しよう!