第11話 妻の眼差し

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俺が一番、厄介に思っているのが素人だ。 素人は何をするか分からない。 状況が悪ければ悪くなる程、判断力が鈍くなり、下手をすれば悪い結果へと導いてしまう。 そうなる前に手を打たないといけなかった。 「ちなみに射殺してもいいんだな?」 「ああ。人質を全員、救ってくれ」 「……分かった。奴らをおびき出す方法があるが聞きたいか?」 「ああ、聞かせろ」 俺はまず二人の強盗犯を入口に誘いこさせる作戦を提案した。 「奴らは逃走用の車を要求しているのだろ。それを入口付近に用意してくれ。乗り込む前に決着(けり)をつけてやる」 「なるほど。だが、人質の1人を連れ出したらどうするつもりだ?」 「その人質には悪いが、いっときの危険だ。堪えてもらおう」 俺は冷たく言い放つと、森次が鼻で笑った。 「酷い男だな」 「俺は正義のヒーローじゃない……殺し屋だ」 俺の目に火がついたのか、森次は黙ってスマホで指示を出しながら部屋を後にした。
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