第11話 妻の眼差し

24/30
前へ
/620ページ
次へ
森次が部屋から出ると、部屋には俺だけになった。 逃走用の車を用意するには少しの時間がかかる。 だからといって、何もしない訳では無い。 まずはライフルを調整して、その次が風土計で風の確認。 そして最後はスマホで妻に…… ――いかんいかん。 俺は取り出したスマホをまた内ポケットに閉まった。 妻の不倫以降、おまじないが無くても手の震えはなかった。 不倫の事が許せなくて、許せなくて、仕舞いには妻の事が心配にならなくなっていたのだ。 そんな中、窓の外が騒がしくなった。 どうやら、外で動きがあった様なので俺はスコープから、窓の外を覗いた。 銀行の入口には既に逃走用だと思われる車が一台、止まっていた。 すると、強盗犯と人質が出てきた。 強盗犯は黒マスクを被っていて人質を抑えつつも、拳銃を頭に突きつけていた。 だがそれよりも、俺が気になったのは人質の方だった。 さっきまで震えてなかった手が人質を見た瞬間、再び震え始めた。 そんな……どうして…… どうして、妻がそこにいるんだ。
/620ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2356人が本棚に入れています
本棚に追加