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森次が部屋から出ると、部屋には俺だけになった。
逃走用の車を用意するには少しの時間がかかる。
だからといって、何もしない訳では無い。
まずはライフルを調整して、その次が風土計で風の確認。
そして最後はスマホで妻に……
――いかんいかん。
俺は取り出したスマホをまた内ポケットに閉まった。
妻の不倫以降、おまじないが無くても手の震えはなかった。
不倫の事が許せなくて、許せなくて、仕舞いには妻の事が心配にならなくなっていたのだ。
そんな中、窓の外が騒がしくなった。
どうやら、外で動きがあった様なので俺はスコープから、窓の外を覗いた。
銀行の入口には既に逃走用だと思われる車が一台、止まっていた。
すると、強盗犯と人質が出てきた。
強盗犯は黒マスクを被っていて人質を抑えつつも、拳銃を頭に突きつけていた。
だがそれよりも、俺が気になったのは人質の方だった。
さっきまで震えてなかった手が人質を見た瞬間、再び震え始めた。
そんな……どうして……
どうして、妻がそこにいるんだ。
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