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俺は強盗犯と一緒に連れ出されている人質に凍りついていた。
よりによって、香澄がその人質とされていたからだ。
これで妻をスコープから、眺めるのは二度目となった。
とにかく早く、助け出さないといけなかった。
問題はどうするかだ。
俺は妻を人質にされた憤りと焦りで、この状況をどう判断すればいいのか分からなかった。
しかも、久しぶりに手が震えている。
一発で強盗犯と決着をつけなくてはいけないのに、これでは無理だ。
久しぶりの恐怖が俺に襲いかかってきた。
とにかく落ち着つけっ!
まずは私情を捨てるんだ。
そう……あれは妻ではない。
人質にされている、只の専業主婦だ。
それに奴は他の男と身体を重ねた。
――そうだ、あれは妻ではない。
夫を平然と裏切った、不倫女だと思えばいい。
人質とされて今にも泣きそうになっている妻を見て、そう何度も自分に言い聞かせた。
だが……
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