第11話 妻の眼差し

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俺は強盗犯と一緒に連れ出されている人質に凍りついていた。 よりによって、香澄がその人質とされていたからだ。 これで妻をスコープから、眺めるのは二度目となった。 とにかく早く、助け出さないといけなかった。 問題はどうするかだ。 俺は妻を人質にされた憤りと焦りで、この状況をどう判断すればいいのか分からなかった。 しかも、久しぶりに手が震えている。 一発で強盗犯と決着(けり)をつけなくてはいけないのに、これでは無理だ。 久しぶりの恐怖が俺に襲いかかってきた。 とにかく落ち着つけっ! まずは私情を捨てるんだ。 そう……あれは妻ではない。 人質にされている、只の専業主婦だ。 それに奴は他の男と身体を重ねた。 ――そうだ、あれは妻ではない。 夫を平然と裏切った、不倫女だと思えばいい。 人質とされて今にも泣きそうになっている妻を見て、そう何度も自分に言い聞かせた。 だが……
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