2356人が本棚に入れています
本棚に追加
俺の頭に自然と浮かぶのは、笑顔を振りまく妻の顔だった。
可愛いくて、優しくて、ニコニコと笑う妻の姿だった。
それを思い出せば出すほど、妻への憎悪が徐々に消えた。
……やはり、ダメだ。
例え不倫はしていても、俺は香澄を愛している。
その事実は決して覆らない。
俺は再びスナイパーライフルを構え直した。
そして、スコープから強盗犯の一人を覗き込むと妻に拳銃を突きつけている奴の頭に照準を合わせた。
気が付くと、震えが止まっていた。
――これなら、いけるっ!
俺は軽く深呼吸をした後、息を止めた。
そして、次の瞬間……
見事なヘッドショットで強盗犯の頭に大穴を開けた。
頭を撃たれた強盗犯はその場で動かなくなり、その場に自然と倒れ込んた。
返り血を浴びた香澄は怖気づいて動けなくなっていた。
一発の銃声で外は騒然としていた。
ところが妻は一体、何が起きたのか分からないのかそのまま動かない。
だがそれは、中にいたもう一人の強盗犯も同じだった。
最初のコメントを投稿しよう!