第3章  隣の部屋のクラスメイト

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第3章  隣の部屋のクラスメイト

 翌朝はノックの音で起こされた。  時計を見ると八時を過ぎたところだ。寝起きのまま何も考えずにベッドを下りてドアを開けると、廊下に背の高い男が立っていた。片手にトレイを持っている。  誰だったっけ?とぼんやりしていると、彼はちょっと困ったように笑った。 「ごめん、起こした? きのう、かなり疲れたんだろ?」  ああ、隣りの部屋の生徒だと思う。  そうだ。ここは学校の寮で、昨日着いたばっかりで。えーと……、こいつの名前はなんだったっけ?  寝起きでうまく回らない頭のままぽやんと目の前の相手を見上げていると、彼は首をかしげて浩美の顔をのぞきこむ。 「夏目、起きてる? 隣りの北原誠司(きたはらせいじ)だけど」  そうそう、北原だ。まだぼんやりしたまま、うなずいた。 「起きてる。なに?」 「これ、朝ごはん。休みの日でも朝めしの受取りは八時までだから、適当に持ってきたんだけど」  トレイのうえにご飯とおかずとみそ汁、納豆と牛乳のパックとマグカップがふたつ載っていた。  そうだった、ときのうの説明を思い出す。  食事時間は決まっていて、平日も休日も朝は六時半から八時まで、昼は十二時から十四時まで、夜は十八時から二十時までと教えられていた。給食タイプでメニューは選べないが、三食作りたての温かい食事が出るのは育ち盛りにはありがたい。 「うちの食堂、基本、主食は米なんだ。夏目ってひょっとして洋食派? パンってほとんど出ないんだけど」  ようやくはっきりしてきた頭でトレイのうえを認識する。食堂に来ない浩美のために持って来てくれたのだと理解した。
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