第1章  ホテル仕様の学生寮  

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「彼はきみのクラスの委員長で篠田暁くん。ひとまず寮の案内と説明をしてあげて。学校の案内は月曜でいいから。まあ、そう規模の大きい学校でもないから、すぐなじめると思うよ。困ったことがあったら篠田くんに相談して、もっともっと困ったことがあったら僕に相談しに来てください。僕は今年の高等部の寮監だから、寮の一階の寮監室にいるからね」  簡単に田中が紹介した。 「お母さんにはもう少しお話があるから、夏目くんは先に寮に行っていいですよ。お母さんにも後で寮を見てもらいますけど」 「わかりました。じゃあね、母さん」  校長の言葉に立ち上がった浩美は母親に声をかけた。篠田が予想したよりすこし低めの落ち着いた声。大きなスポーツバックを肩にかけて篠田とともに校長室を出た。  立ち上がってみると、背は篠田より少し低かった。一六五くらいか、特別きゃしゃな感じでもなく、細身だが腰の位置が高くてバランスがいい。 「ええと、さっき紹介されたけど篠田です。ひとまず部屋に行って、その荷物を置いてから寮内を案内するのでいい?」 「はい」  廊下を歩きながら話しかけると、短い返事が返ってきた。緊張しているのか、もともと口数が少ないのかわからない。表情はほとんど変化がなかった。教師の前ではなくても愛想はないらしい。  授業が終わった校舎棟はひと気がなくがらんとしていて、浩美の履いている来客用スリッパの音がパタパタ響いた。
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