第1章  ホテル仕様の学生寮  

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「外靴、どこ?」 「来客玄関に置いたままです」 「じゃあ、履き替えたら寮に行こう。上靴は指定なんだけど、購買もう閉まってるから月曜に案内するよ」 「はい。寮内はどうすれば?」 「なんでもオッケー。スリッパとかサンダルとかビーサンもいるよ。外靴に見えるスニーカーとかは禁止。室内は個人の自由。全員ひとり部屋だから、部屋でははだしってやつも多いかな。あと敬語じゃなくていいよ、ふつーで」 「わかった、そうする」  話しているうちに来客玄関に着いた。浩美がスニーカーに履き替えているあいだに、篠田は昇降口にまわって来客玄関から出てきた浩美を手招きする。  靴箱がずらりと並んだなかで一年A組とプレートのあるところで立ち止まった。扉のない二段になったよくあるタイプの靴箱だったが下の段が通常のものよりかなり高さがある。雪対策用のブーツタイプの靴を入れるためだ。上の段には上靴が入れてある。 「夏目くんの靴箱はここ。で、ここから外に出て右に行けば寮に着く」  昇降口を出て、ゆるやかな幅広い階段を十段ほど降りるとコンクリートの道が続いていた。 校舎棟の前にはさほど広くない校庭があり、部活動なのだろう、ランニングしたりボールを投げ合ったりしているジャージ姿の生徒がいた。ちらちらと私服の浩美を見ている。ひそひそ話す姿を横目に、篠田と並んで寮までの短い道を歩く。
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