第1章  ホテル仕様の学生寮  

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「雪とか雨で本当にびしょ濡れになったら、あっちのオープン棚にみんな適当に置いてるから。ガラス張りで日当たりいいからわりと乾くよ」  来客用によく見かけるオープンタイプの靴箱が壁際にいくつか並んでいる。 「で、この玄関エリアは中等部高等部の共有スペースになってる。そこの通路から先が東棟で中等部の寮と職員寮になってる。高等部はこっちの南棟」  カーペットの敷かれた廊下をすすんですぐに、ガラス張りの広いレストランがあった。  まだ昼食時間でガラス越しに生徒たちが食事をしたり話していたりするのが見える。 「ここが食堂。生徒全員と教職員もここを使う。食事時間は平日も休日も朝は六時半から八時まで、昼は十二時から二時まで、夜は六時から八時まで。食事のことはあとで食堂に行ったら詳しく説明するよ」  篠田と浩美に気づいた生徒が何か話しているようすも見てとれた。何人かが篠田に手を振り、篠田はひらひらと手を振りかえす。 「とりあえず、先に部屋に行こうか。二部屋空いてるけど、まず三階の部屋見る?」 「はい」  浩美がうなずくとちょうど建物の真ん中あたりにある階段を登っていく。何人かの私服姿の生徒とすれ違い、ほぼみんなちょっと驚いたような顔で浩美を見ていたが、篠田はいちいち止まらずに浩美を案内した。掴まるとあれこれ訊かれるのは目に見えている。 「エレベーターは止まってるから使えないよ。節電でね。夏目くんは三階、三三五号室の予定」  廊下のいちばん端の部屋だった。突き当りの壁に非常口の表示があり、防火扉の向こう側は非常階段があるんだろう。
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