第1章  ホテル仕様の学生寮  

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 篠田がカギを開けて、さきに立って部屋に入る。浩美は後ろをついて入り、二段チェストの上にスポーツバッグを置いた。そのままぐるりと部屋を見て、すこし安心したように表情を緩めた。  その顔を見てやっぱり緊張していたのかなと篠田は思う。  ホテルの設備をそのまま使用していると言ったのは誇張ではなかった。ホテルによくあるツインルームの作りだった。  入って来た通路の片側にクローゼットがあり、反対側に洗面台とバスルーム。リゾートホテル仕様で風呂とトイレは別になっている。  左の壁際に大きめのベッド、正面のテラス前に丸いモザイクテーブルと椅子が二客。右側の壁際にライティングデスクとデスクチェア、その横にテレビ台と荷物おきの二段チェストという造りだ。  篠田がドアを開けて中を見せると、浩美はバスルームやトイレを確認してうなずいた。 「けっこうきれいだね」 「週に一度、寮監の清掃チェック入るから。あんまり散らかしてると怒られる。田中先生はそんなに厳しくないけどね」 「そうなんだ」  浩美はクローゼットや引き出しを開けて中を確かめ、それからテレビ台の下を開けてみた。ホテル仕様の小さな冷蔵庫と電気ポットまできちんとおさまっていた。食器類はなかったが、棚はそのまま残されている。
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