第1章  ホテル仕様の学生寮  

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「そうなんだ?」  浩美はすこし居心地悪そうに篠田を見る。篠田の笑顔をどうとらえたらいいのかと困惑しているような感じだ。 「高等部から入って来た生徒の中には連絡取れなくて別れちゃう遠距離カップルがけっこういるからさ。いないなら心配しなくていいね」  そういう意味かと浩美は肩をすくめた。 「部屋の使い方はわかるだろうから、注意事項だけ。このクローゼットのなかの貴重品ボックスとテレビの下の冷蔵庫は使える。テレビもつくけど民放三局とNHKしか映らない。ラジオも有線はなし。部屋の電話は寮内のみで外線は使えない」 「外への電話は公衆電話だけなんだ」 「そう。でも校舎棟では携帯使えるから、みんな放課後とかに電話してるけどね。下校時刻は五時四十五分だから、夜に電話使いたかったら公衆電話で。消灯は十一時。さっき言ったけど消灯後から朝五時までは部屋から出ないこと」 「消灯は十一時?」 「うん。十分前に寮監の点呼があるからそれまでに部屋に戻ってくること。起床時間は決まってないけど、七時に館内放送がかかるからそれで起きてる奴が多い」 「寝過ごす心配はないってこと?」 「大丈夫だと思うよ。食事時間は食堂に貼ってあるけど、平日も休日も朝は六時半から八時まで、昼は十二時から二時まで、夜は六時から八時まで」 「わかった」 「お湯が出るのは朝六時から八時までと夕方六時から夜十一時までで、それ以外の時間は水になるから注意して」 「お風呂は好きな時間に入っていいの?」 「いいよ。朝シャワーでも夜風呂でも大丈夫」  浩美がうなずいたのを見て、篠田は続けた。  「それからさっき言ったように週に一度、寮監の清掃チェックがあるから気をつけて。掃除機は後で案内するけど、洗濯室に置いてあるから自由に使える。……そんなとこかな。何か質問ある?」  さらさらと説明され、浩美はちょっと首を傾げたのち「何も」と答える。
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