第2章  よそゆきモードのひろみちゃん

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第2章  よそゆきモードのひろみちゃん

 受け取った鍵をパンツのポケットにしまう。あとでキーホルダー探さないと。  開けっぱなしの生徒も多いらしいが鍵は掛けた方がいいよと篠田は言うし、言われなくても浩美は施錠しておくつもりだ。  不特定多数が暮らす寮で、そんな無防備でいいのか? でも中等部から入っている生徒はそれでも平気なんだろうか。長く暮らしていると開けっぱなしが普通になってしまうのかもしれない。  寮生活の感覚がよくわからないので浩美には不用心に思えるが、慣れの問題だろうか。  まあこういう感覚は個人差あるよな。それにしても寮が清潔で助かった。何より個室と言うのが浩美をほっとさせていた。中等部は二人部屋らしいので高等部からの編入でよかったと心から思う。  一人っ子同然に育った浩美は個室のある生活しか知らないし、今さら見ず知らずの他人と二人部屋では過ごせない気がしていた。事前に個室だと聞いていたが、予想していた以上に寮内は快適そうだった。  部屋の広さも十分だし、セミダブルのベッドも広くていい。寝相は悪くないが、日常生活を考えたら三階のほうがよさそうだからちょうどよかった。  寮内でネットに繋げないことだけは驚いたけれど。個室でネットが使えるとなればいろいろマズイことが起きるんだろうなと予測はついたので、それについて文句を言う気はなかった。  談話室や自習室にはパソコンはあるし、校舎棟でもネットは使えるようだから勉強するぶんには影響ないだろう。  校舎棟も昇降口から校長室、理事長室しか見ていないが、とても機能的に造られているようだった。  さっき会った理事長は「学習環境は整えていますから、安心して勉学に励んでください」と言っていたくらいだから、校舎棟もそれなりの設備だろう。 特待生として浩美に期待されていることは優秀な成績を修めて鳳凰学園が指定する大学に合格することだ。当然、それはクリアする気でいる。
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