第2章  よそゆきモードのひろみちゃん

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 さらに「学園生活を楽しんでもらいたいし、ここで出会った仲間と切磋琢磨して末永く続く友情を育んで欲しい」とも理事長は言っていた。  それはちょっと難しいかも……と浩美は内心首をかしげながら聞いていた。浩美の性格から言って、そんな簡単に友情を育めるとは思えない。  篠田の横について歩きながら、浩美はどうするべきか考える。  ここで地を出して過ごしていけるのか。寮生活は初めてだし、幼馴染みの園田が心配したとおり浩美は親しみやすい性格とは言えない。口数が少ないせいもあるが、これはそう簡単になおせるものじゃない。  そもそも整いすぎた外見のせいで遠巻きにされることもよくあり、こういう場でどうしていいのかよくわからなかった。  東京で通っていた学校の中等部入学のときを思い出してみる。あの時はどうやってなじんだんだっけ?   ……ああそうか。園田がいたからそんなこと考えなくてすんだんだ。  同じ小学校から入学したのは園田と浩美のふたりだけだったが、にぎやかでお調子者の園田に振り回されているうちに、いつの間にか浩美もクラスになじんでいた。園田の存在の大きさを実感するのはこんなときだ。  けれども園田はここにはいないし、中学入学時とは浩美の状況が大幅に違っている。それに時期も悪いよな、と浩美はため息交じりに思う。  高一のまだ六月初めだ。ふつうに考えれば入学して二ヶ月、どんな問題を起こして前の学校をやめたのかと勘ぐられても無理はない。どういうタイプの生徒が集まっているかもまだわからない。  今まで通っていた学校とは全然雰囲気が違うだろうとは予測しているが、それが浩美にとっていい方に転ぶのかどうかもつかめない。ここで本音でつきあえる友人なんてできるだろうか。  鳳凰学園は全寮制だから、きっと今までより密度の濃い人間関係になる。それが浩美には憂鬱だった。できる限り誰とも親しくなりたくない。正直に言うならそう思っている。  どちらにしても大学入試が終わるまでの話だ。そう判断した浩美は、よそゆきモード(園田命名)でいくことに方針を決めた。
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