第2章  よそゆきモードのひろみちゃん

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「……疲れた」  部屋に戻った浩美はぼすっとベッドに突っ伏した。  時計はすでに十時近い。今まで篠田たちと一緒にいたのだ。たちというのは同級生数人だ。寮内とついでに寮周辺の敷地内の案内をしてもらって、その流れで一緒に夕食を食べたあと、その場にいた同級生たちに談話室に連れて行かれる羽目になった。  篠田が言ったとおり、あちこちから声を掛けられ、自己紹介をしたりされたり、好奇心旺盛な質問攻めにあったりして、もともと社交的ではない浩美をたいそう疲れさせた。  あまり愛想良くしていい奴だと誤解されても困るのでかなりそっけない対応になったが、横についていた篠田の抜群のフォローや突っ込みで、浩美は照れ屋で人見知りという感じに受け止められてしまっていた。  はなはだ不本意だったが「そうじゃないから」と言って回るのもおかしな話で、仕方なく聞き流すことにした。というより、そうするよりほかになかったのだ。  照れ屋で人見知り。  だれの話だよって園田が聞いたら大爆笑しただろう。  前の学校の「学園一のクールビューティ」もどうかしていると思っていたが、今回もまったく実像とちがう印象を持たれて、浩美は激しく戸惑っていた。
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