第3章  隣の部屋のクラスメイト

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 黙って食事をしていたが、北原は特に話しかけてこない。気まずいようなそうでもないような。でも食べながら会話するのは苦手だから話しかけられなくてほっとする。口の中に食べ物があると、どんなタイミングで話していいかわからなくなるのだ。  あれこれ訊かれるのも昨夜で辟易したので、北原が静かにお茶を飲んでいるだけなのに安心した。何も話さずに黙々と食べ終えて箸を置く。  また小さく「ごちそうさまでした」と手を合わせた。北原がかるくうなずく。 「けっこう食べるほう?」 「うん。べつに小食じゃないよ」  マグカップのお茶を飲んで、窓の外を眺めている北原に訊ねた。 「いつもこんなメニュー?」 「そうだな。朝は比較的和食が多いかな。冬はうどんとか雑炊も出る。昼はもうちょっとがっつりしたおかずが多くて、からあげとかとんかつとか鶏の照り焼きとか。夜も和洋中いろいろだな」 「そうなんだ」  昨夜のメニューはチキングラタンだった。  ボリュームもあっておいしかったが、大人数で食べる食事は慣れなくて緊張した。自宅ではたいてい母とふたりか、母が出かけていたらひとりで食べるかだったから。  同世代の男子ばかりという環境は今までもそうだったけれど、私服で食堂に集まる状況は初めてだったからそれだけでも新鮮だった。  みんなジャージやトレーナー、Tシャツ程度のラフな服装で、気軽な雰囲気だったので安心はした。寮内は全体的にのんびりした印象で、部屋も食堂もホテル仕様で学生寮らしくないせいか、修学旅行にでも来た気分になる。
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