第1章  ホテル仕様の学生寮  

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第1章  ホテル仕様の学生寮  

 東京から電車とバスを乗り継いで約四時間半。浩美はようやく鳳凰学園の門の前にたどりついた。一緒に来た母親は、乗り継ぎの悪さに大きなため息をついている。  車なら高速を使って都心から三時間ほどらしいが、あいにく母親は免許を持っていない。帰省の予定もないので不便なことは気にならないがこんな環境で暮らすということには不安を覚えた。  周囲を山に囲まれたというよりも、山の中腹を切り開いて建っている学校だった。緑に包まれたと言えば聞こえはいいが、ようするにド田舎だ。  冬は相当、寒そうだ。寒いどころかかなり雪が積もるんだろう。今は新緑が美しく爽やかな風が吹いているが、ここでどんな学校生活を送ることになるのか。都心でしか暮らしたことのない浩美には想像がつかなかった。  鳳凰学園に着いてその外観を見てはじめてわかったが、どうやらここはもともとはホテルだったようだ。雪対策のために屋根に急角度をつけた北欧風の建物は、山の中に建っていると日本に見えなくてメルヘンチックな雰囲気だ。  全寮制の男子校に編入すると聞いたときにはどんなむさ苦しいところかとうんざりしたが、こうして外観を見る限りはそんな感じはまったくない。
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