第1章  ホテル仕様の学生寮  

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「編入生が来るってよ」 「編入生?」  何人かが顔を見合わせた。 「編入なんて制度あった?」 「あるらしいよ」 「そう? 聞いたことないけど」 「今まで一人だけいたとか聞いたな」  土曜の午前授業を終えた食堂は、休みの解放感であふれていた。鳳凰学園では土曜日も午前中は通常授業があるため、昼休みからが休日となる。  休日といっても何しろ山の中の学校なので、気軽にどこかへ遊びに行けるわけでもないが、やはり気が緩む。授業終わりの制服姿のままでも平日とはちがうのんびりした空気のただようなか、館内放送が入った。 「高等部一年A組、篠田暁(しのだあきら)くん、食事を終えたら校舎棟の校長室までお願いします」  学級委員の篠田への呼び出しを聞いて、噂は本当なのかと視線が飛んでくる。 「篠田、ほんとに編入生って来るの?」 「そう聞いてる」  制服のままの篠田が、食事の終わったトレイを返却口に持っていこうと立ち上がる。 「この時期に編入なんてなんかわけあり? 篠田はなにか聞いてる?」 「詳しくは知らない。とにかく優秀らしいってことしか」  学年途中で編入させるほど優秀ってどういう奴なのか。娯楽の少ない学校生活で滅多にない事態にざわめきが大きくなるのを背中に聞いて、篠田は急ぎ足で寮を出た。寮から校舎棟までは急げば五分ほどで着く。
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