第1章  ホテル仕様の学生寮  

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 校舎棟二階の校長室まで来てドアをノックすると、どうぞと担任の大森の声がした。  校長室のソファには校長の横に学年主任の田中、向かい側に私服姿の少年とワンピースにジャケットを羽織った母親だろう女性が座っていた。  少年はひどくきれいな顔をしていた。隣に座る母親によく似ていて、人形めいた整いかただった。つややかな黒髪、透きとおるような肌、濡れたような瞳という形容が似合う同級生の男を篠田は初めて見た。  今どきのアイドルによくありがちな親しみのある感じではなく、ちょっと近寄りがたい硬質な雰囲気の美少年だ。貴族的な上品さとでも言えばいいのか。   体温低くて汗とかかかなさそう。陶器でできたような滑らかそうな肌を見て、そんな感想を持つ。  人目を引く容姿だったが、きれいであっても目つきの鋭さには少年らしさが見える。彼はちらりと入って来た篠田に目を向けたが、すぐにそらしてしまった。ガラスのような眼だ。  同級生に対する興味や楽しみは浮かんでいない。緊張しているのかそれとも無愛想なタイプなのか。篠田は小柄な彼に興味を持った。 「ああ、篠田くん。こちらが話しておいた編入生の夏目浩美くん」  田中の手ぶりに合わせて、ごく軽く座ったままの浩美が会釈した。微妙に目線は合わせない。なつめひろよし、と口の中で反復する。
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