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ある街の歓楽街。昼間の通りには人影はなく、何十年と経っているであろう老朽化した建物が並んでいる。
「本当にこんなとこにあるのかな」
その場に似つかわしくない、学生服姿の少女が呟く。何かを探しているのか、キョロキョロと辺りを見渡しながらゆっくり歩いている。
「それにしても胡散臭のよね、その『萬屋』っていうの。噂通り本当に何でも出来るのかわからないし」
『萬屋 レミュン』
噂によると依頼があれば、どんなことでもやり遂げるという便利屋らしい。それは例え『存在しないのモノ』ですらどうにかしてしまうと言う。
胡散臭いと言いながらも探していると、いつの間にか薄暗い通りの方まで来てしまっていた。
この先はもうスラム街になっている。
(ヤバイ。目が合っちゃった…)
スラム入口の方にいたスキンヘッドでサングラスをかけたの男(明らかに危険人物だ)がこちらを見ていた。目が合うと、男は少女の方へ歩いてきた。
慌てて踵を返したが、男は追い掛けてくる。
(あ~、もう最悪!!)
制服なんて着てこなければよかった。胸中で悪態をつくが、着て来てしまったものはどうしようもない。
少女は少しでも男から離れようと走り出した。しかしそれに合わせ、男も走って追い掛けてくる。
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