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「おいっ!!待てっ!!」
そう言われて待つ馬鹿はいない。だが少女が男の足に勝てるわけもなく、男との距離はどんどん縮んでいく。
距離を確認しようと後ろを振り返った直後に、何かとぶつかった。
「きゃっ!!」
「あっ!!」
勢いもついていたせいか、尻餅をついて倒れてしまった。前を見ると、同様に地面に尻餅をついて倒れている青年がいた。持っていた紙袋は潰れてしまっている。
「あぁ!!またエルに怒られるー!」
潰れた紙袋を見て嘆く青年は、泣きそうな顔をしていた。
しかしそんなことに構ってはいられない。男との距離はもうそんなにないのだ。このままでは逃げ切れない。
「助けて下さい!!」
少女は必死に助けを求めた。青年は今初めて少女に気付いたらしく、涙で潤んだ瞳で少女を見つめる。
最初は不思議そうに見ていた青年は徐々に射抜くような視線を少女に向けた。そして薄い笑みを浮かべ聞き返した。
「“何から”助けてほしいって?」
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