シミュラクラーヒトガタ

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傲慢だろうか、否、そうではない。俺は確かに優れている。この中学校では周りの誰もが俺以下だ。 テストの成績なら常に満点、どころか2位の奴は一教科あたりで30点以上下。球技ならば俺のチームが常勝。運動場を何周もする長距離を走れば全員を周回遅れに出来る。 容姿だって……そう、そもそも容姿だ。なぜここの連中はこうも不恰好なのだろう。 休憩時間になっても会話はなく、走ればカクカクと身体を動かしてばらばらの手足で走るその姿はまるで溺れている様だ。 顔色も悪い。顔立ちも嫌に崩れている。 ……まるで、俺以外は人間ではないのではないかとさえ思えてしまう。 いや、そんなバカなこと、考えても仕方ない。きっとこの学校のレベルが低いのだ。 勉強しよう。きっと高校を受験して都会に出れば俺が井の中の蛙だったと思い知らされる。 底辺であろう周りを見るのはやめよう。上をもっと目指せばいいんだ。 ……………………………………………………………………………………………………… 白衣の男「被験体はまだ気づいていない様ですね」 白衣の女「無理もないでしょう。大人でも周りが全部ロボットだったなんてSFの様な話、信じる事は難しいですし……彼は鏡に映る自分以外に生まれた時から今まで人に会った事がないんですから」 白衣の男「シミュラクラだったかな?人の目は目と鼻の位置に点があればそれを顔と見間違う……そういうものらしいよ」
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