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まるで甘えるようなそんな少年じみたザイードの仕種に愛美は思わずドキッとした。
ザイードは愛美を抱えてラクダに乗る。慣れた手付きで肩に捕まるように腕を回した愛美を少し驚いたように一瞥するとザイードはふと優しい笑みを見せた。
その表情にまた愛美の胸がざわめく──
思わず俯いて目を反らした途端、愛美の腹の虫が唸った。
「──…っ!…」
愛美は瞬時に真っ赤になっていた。
ザイードは目を丸くしてまた優しく笑う。
「仕方がない──…ほとんど何も口にさせずに此処へ連れてきたからな……」
「………」
まるで自分の行いを反省するようなザイードの口振りに驚いて愛美は顔を上げた。
「……っ…」
間近に見た自分を見つめるザイードの視線に釘付けになる。
「寝所に戻ったらたっぷりの食を与えてやる……」
見つめていた黒く大きな瞳がゆっくりと伏せられていく──
「腹を満たしたその後にまたお前を抱く──…抗うことは許さん」
「……んっ…」
そんな強い束縛の言葉の後に柔らかな口付けと熱い唾液が愛美の口腔に注がれていた。
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