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「マナミ様……そろそろ身支度のお時間が押しております…」
ゆさゆさとうつ伏せの肩を揺らされる。静かで穏やかな声は眠り込んだ愛美を何度もそうやって揺り起こしていた。
愛美はんん…と小さく声を漏らした。
そして突然起き上がる。ハッとすると裸の上半身にカラフルな布を巻き付けて肌を隠した。
眠っていた側に膝を付き、白装束に身を包んだ年配の男が目覚めた愛美に無表情で答える。
「お目覚めでございますかな?ザイード様の御付き、アレフでございます。──…そろそろ夕刻、今夜はザイード様も食の間でお召し上がりとのこと、マナミ様も支度を整えてくるようにと……」
驚きで目を見開く愛美に淡々とその者は言った。
「夕刻──…」
愛美は小さく呟いた。時間の感覚はとうにない。今が何時なのかも全くわからない──
「マナミ様がこちらにいらっしゃって丸三日──…」
「三日っ!」
思わず大声で叫んだ。
マナミの知りたかったことをさらりと口にしたアレフを愛美は目を見開いて見つめる。
「三日三晩──…ザイード様とマナミ様はこちらにて過ごされております…」
「うそ……」
愛美は顔半分を赤くしながら呟いた。
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