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廊下は、怖いくらい静まり返っていた。早朝なのにいくらか暗く感じる。校舎自体そんなに新しいものでもない。それにくわえて、生徒の声一つしないこの状況が、きっと今の微妙な雰囲気を作っているのだ。
廊下の壁の黒い染みが怪しい模様に見えて
蒼は目をそらした。
(小学校の時の肝試しじゃないんだしっ!)
蒼自身、日直の仕事などすっかり忘れていた。
しかし、教科書類を鞄につめている時になって急に思い出したのだ。
ノートからちらりと見えた「13」の出席番号。
今になって思えば、なんだか思い出したくなかったような。
担任から日誌を受け取り、自分の教室へまだ寝ぼけておぼつかない足取りで向かう。
廊下の窓からはうっすら白い光が射していた。
(なんだかとけそう…。)
目をこすりながら教室のドアをあけた。
「厚かましいにも程があるわっ!!」
蒼は驚いて後ずさった。
ナサの声だった。
酷い大声を聞いたかと思うと、ナサが勢いよく教室のドアから出て来た。
そして蒼を一目見るなり、少しバツの悪そうな顔をしたが
足早に去っていった。
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