将来の夢

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今日も終業を迎え、皆がぞろぞろと帰って行く中、わたしはのろのろとデスクを片付けていた。 正社員登用の話が頭から離れない。 どうしよう……考えながら歩いていると、もう誰も居ないだろうと思っていたロッカーの辺りで、同じく動きの遅い成海くんと出くわした。 「……どうしたの、出遅れてるよ」 顔を合わせてつぶやいた時、『1杯付き合ってくんないかな……』そんな考えが浮かんでしまった。 だけど、ふたりきりで飲みなんて、そんなことをわたしが提案するわけにはいかないだろう……。 迷っていると、成海くんが口を開いた。 「……1杯付き合ってもらえませんか?」 何故同じことを考えているの……驚いて、目を見開いてしまった。 シンクロしたことに、なんだかドキドキしてしまう。 「……そうだね、明日休みだし」 「僕も休みです」 ふたりとも照れたような顔付きになっている気がする。 お互いが休みの前日にふたりきりで飲みなんて、危険な匂いがする……。 そう感じつつも、行きたいと胸を高鳴らせている自分に勝てなかった。 夜の街を歩き店を探していると、成海くんが店の看板を横目で見ながらわたしに提案する。 「ちょっと個室っぽいとこでも良いですか?」 看板には“半個室”の文字。 ますます危険な匂いがする……。 でも、もしかしたら何か理由があるのかもしれないと、心を落ち着けた。 大丈夫。わたしが理性を失いさえしなければ、過ちは起きない……はず。 それに半個室はあくまでも個室ではない、とよくわからない念押しをした。
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